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親睦から奉仕の理想を生み出す Rotary Club of Engaru,A4,RID2500

  ■例会・プログラム資料等:識字率月間に当たって=社会奉仕委員会(2014年3月6日)
認知症とグループホーム

                                                   社会奉仕員会 兼平 哲雄 委員長
                             本日のプログラムは内容を変更し、現在、我が国で大きな社会問題の一つとなっている
                             高齢化の進展と共に増加しつづけている認知症について、「グループホームありがとう」
                             代表の佐藤直也会員にお話を伺うこととしました。


グループホーム ありがとう  代表  佐藤 直也
認知症を対応としたグループホームを開設して、この3月で9年になりました。
9年間運営に当たって思うことは、世間一般では認知症とか老人施設に対する認識があまりなかったり誤解をしている場合が多々あることです。
ですので、今回お話できる機会を得られたことをとてもありがたく思います。
私は認知症に関する専門家でも何もありません。
ですが、今までに得た経験や知識から出来る範囲で話すことで、認知症に対する理解を少しでも深めていただければ幸いです。

 *内  容
 
1 認知症とは  「認知症とボケの違い」 「症状」   
 2 日本の認知症の罹患者数と種類   「血管性認知症」  「アルツハイマー型認知症」  「薬品」 
 3 グループホームとは   「『グループホームありがとう』の理念より」  「ありがとう理念」
 4 グループホームの現状と問題(介護保険も含めて)
   「介護保険」  「その他」
 5 「最後に」
   施設に預かってもらう決断を早めに下すことを・・・

1 認知症とは

認知症とは、記憶障害により自力では生活が困難になっている状態を言う。
64才以下を若年性認知症と呼び、65才以上の認知症とは区別する。
症状が進むと体の機能も衰え、性格破綻を来す場合もある。
認知症は治癒しない(治らない)。

「認知症とボケの違い」
ボケは脳の働きが一時的に弱っている場合。
機械の例えると、部品の異常は無いが錆ついていて働きが悪い状態をいう。
油をくれてやり、サビを取れば機能は回復する。
認知症の場合は、部品が壊れてしまい働かなくなってしまった状態。         
【写真はイメージです】
いくら錆とりをしても機能は回復しない。

「症状」
自分が誰か分からない、ここがどこか分からない、周りの人が誰だか分からない、様々なものごとのやり方が分からない状態。
記憶関係のものは衰えるが、感情は最後まで豊かに残る。
徘徊(現在は使わない)などの行動障害。
下のおもらしなどした場合、「まずいことをしてしまった、なんとかしなければ」と思い、壁に塗り込んだり食べたりして無くしてしまおうとするなど。
自分の記憶にある場所に帰って安心したい、との感情がわき、その風景を求めて歩き続ける。
毎日目が覚めると新しい世界にいる。
日々不安の中で生きている。
認知症の方は認知症自体に苦しんでいるのではない。
生活がうまく出来ない事に苦しんでいる。
1.想いが伝わらない苦しみ
2.自由にさせてもらえない苦しみ
3.やってみても出来ない苦しみ
4.どこにあるのか見つからない苦しみ
5.なぜ注意されているのか分からない苦しみ
 生活に不自由を感じ、助けてもらえない不安や解決の糸口が見つからない
 不安があり、慌てたりビックリしたりの毎日を過ごしている
【写真はイメージです】

スタッフの善し悪しや人間関係などは鋭く見抜いている。
あまり顔を出さない私をここのトップだと認識し、スタッフの善し悪しを指摘し、ちゃんと教育するようにと指導をすることもあった。
まさに人生の先輩。
「分からないだろう」と思っているのは誤解。
子供扱いするなどはもってのほか。
                                                 

 日本の認知症の罹患者数と種類

認知症の罹患者数 2012年のデータ 462万人(厚生省発表)予備軍400万人
高齢者(65才以上)3,079万人の15%
予備軍含めると28%(女性の方が高い)
85才以上は40%以上

若年性認知症(64才以下) 3万8千人
人口10万あたり 47.6人(男性の方が高い)
人口10万あたり 40代後半で27.1人
         60代前半189.3人

2010年時点で439万人中在宅270万人(60%以上) 内独居者43万人
3割が介護施設
1割が病院

「脳血管性認知症(10%以下)」
血管が詰まることにより、神経細胞が栄養不足になって神経細胞の働きが低下したり死滅したりすることで認知症を引き起こす。

「アルツハイマー型認知症(60%以上)」
神経細胞の表面にベータアミロイドという異常なタンパク質のかたまりが蓄積して認知症を引き起こす。
ベータアミロイドはシナプスに悪影響をおよぼし、情報伝達を妨げ脳全体として認知症を引き起こす。
進行すると神経細胞を死滅させる。
脳容量が減少し神経細胞が大量に変性しているのが特徴。
ベータアミロイドは長期間(数十年)に渡って蓄積される。

アルツハイマー病患者の脳内の遺伝子は糖尿病と同じ状態に変化している。
糖尿病患者はアルツハイマーの発症率は3~4倍。
糖代謝を制御する遺伝子やインスリンを作る遺伝子が激減。
脳内が糖尿病状態になっている。
糖尿病患者は脳内の代謝が悪いため、脳神経細胞が死んでアルツハイマーの発祥や進行の危険因子になっている。
ウツなどの精神障害も、体調不良やストレス、体液の循環不良によって、脳細胞が栄養不足や酸素不足に陥り、弱ったり死滅することで発祥する。
根は一つ。


「薬品」
認知症は治癒しない。
現在の薬品は、ベータアミロイドの蓄積の速度を遅くするもので、認知症の進行を遅らせる効果が期待できる。
アルツハイマーに罹患しないような予防薬は現在開発中。
弱ったり死滅した神経細胞以外の健康な神経細胞を活性化させると、認知症の症状は軽減する。
ここにグループホームの役割がある。
                                                 
 
3 グループホームとは

「グループホームありがとう」の説明より
グループホームとは、認知症のお年寄りが介護スタッフとともに共同生活をする、小規模で家庭的な「第2の住まい」です。認知症のお年寄りに持てる能力を発揮してもらい、スタッフの手助けにより可能な範囲で家事や趣味を楽しむという「生活リハビリ」中心の自立援助的なケアを行い、お年寄りの「人生の質」を高めることを目的としています。

記憶障害があるが他の能力は残っているので、その能力を存分に発揮できるよう支援をする。それにより生き生きと喜びを持って生活できるようになることを期待する。
不安を感じ、生きていることに喜びを見いだせないお年寄り達に、社会的な生き甲斐を持ってもらう。
もとは2階建ての立派な一軒家だったが、柱が何本か折れ屋根が傾いている状態から、スタッフの手助けによって平屋でもちゃんとした家にすることがグループホームの役目。
人生の最後のステージを幸せに安心して人間として生きていただきたい。
叱られず、バカにされず、こまっている時は助けれくれ、そして自分の意思を尊重してくれる場所がグループホーム。

「ありがとう理念」                            
安心して、自由に、主人公として楽しく
安心とは (命の保証)
自由とは (心の保証)
主人公とは(人間の保証)

利用可能な方
要支援2要介護1~5で認知症の診断書を得ている方。
遠軽町に籍がある方。
転入した場合は転入してから半年以上経過した方。

「ありがとう」現在の入居者

介護度
要介護2 1人
要介護3 6人
要介護4 5人
要介護5 6人   平均介護度 3.88

年齢
70代  4人
80代 10人
90代  4人  平均年齢84.6才
                                                 


 グループホームの現状と問題(介護保険問題も含めて)

グループホームは1980年代からヨーロッパで始まる。
日本では、スエーデンのグループホームをモデルにする。
平成9年(1997年)認知症対応型グループホーム業務開始。
平成12年(2000年)介護保険法制定。
平成24年でグループホームは11,770カ所。
利用者17万3千人。
全体のわずか4%未満
遠軽では「春来」が平成16年開設(当時全国で5,500カ所)。
「ありがとう」は平成17年開設(当時全国で約7,000カ所)。
21年に1ユニット増設。

遠軽
旧遠軽 3カ所(5ユニット)
旧生田原 1カ所(1ユニット)
1ユニットにつき9名の入居者
合計 54名
待機者56名
遠軽町は、現在おおよそ不足はないと判断しており、当面グループホームを増やす意志はない。
介護保険の見地からは、グループホームは介護保険には負担が大きい。
利用者料金 月11万円前後。
都市圏では20万円近く。



「介護保険」

保険者は市町村
被保険者40才以上
「介護施設がいただく給付金の内訳」
10%本人負担
残りの90%は介護保険より

介護保険の財産構成(100%)= 公費(50%)+ 保険料(50%)
公費(50%)= 国(25%)+ 道(12.5%)+ 町(12.5%)
保険料(50%)= 第1号被保険者(21%)+ 第2号被保険者(29%)
           65才以上        40~64才

給付金は平成26年度で9兆3千億円と推定
18年度では5兆9千億だった。
8年間で1.6倍。

「介護保険料負担」
2000年度は2,075円
2014年度は40才~64才で5,000円を超過。
約2.5倍。


「介護スタッフ」
3Kと言われており、従事者が少ない。
きつい、きたない、危険、安い
実際は
不規則、責任の重さ、働きがいのなさ、昇給の見込みが薄いなど。



「その他」

グループホーム以外の施設

小規模多機能型居宅施設(きなり)
特別養護老人ホーム(花の苑、プライム生田原、丸瀬布ヒルトップハイツ、グリーンプラザ)
合計  220名 
待機者 328名 グループホームとあわせて 384名


認知症罹患者人数予測

2015年 65才以上 3300万人 × 0.15 = 500万人
人口 1億2千4百万人

2030年 65才以上 3600万人 × 0.15 = 540万人
 人口 1億1千7百万人

現在65才~70才に人口のピークがある。


認知症に対する町民、家族の理解
家族と施設が協力しあいながら本人のためになるようにする。

各施設の役割の理解
グループホーム、特別養護の違い等。
どこにでも申し込みをすればいいというものではない。

介護保険の制度の安定
グループホーム本来の役割から離れて、特別養護老人ホーム的な役割を果たすよう求められるようになった。
また特別養護老人ホームは逆にグループホーム的役割を求められている。
介護保険の料率が業者にとっては不利な方向へとどんどん変えられている。
                                                 


「最後に」

認知症のご家族や親戚の方を抱えていらっしゃるメンバーもいると思います。
また、これから直面する方もいると思います。
昨年、友人から相談を受けました。
お母様が認知症に罹患し、家族でなんとか介護をしてきたが、だんだんそれも厳しくなってきた。親戚に相談したが施設に預けるのは猛反対されている。どうしたらいいだろうか、という相談でした。
お母様の現状をお聞きした上で、施設に預けなさい、親戚がなにを言おうが一切無視してよろしい、とアドバイスをいたしました。
友人は悩みに悩んだ末、うるさい親戚と縁を断ち切ってお母様を施設に預けたそうです。
預けた後も、これでよかったのかどうか、と悩んでましたので、「ベストの選択です。あなたもお母様にとっても本当にベストの選択をしたんです。」と元気づけました。
症状が進むと24時間の介護が必要になります。
しかし家族だけでは不可能なことです。
無理をすると、家族のみならず本人にとっても不幸な結果を招いてしまうので、もしそのような時が訪れましたら、決して無理をしないようにして下さい。
うしろめたく思う必要はありません。
施設に預かってもらう決断を早めに下すことをお勧めします。

      【写真はイメージです】